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2013.4.26

■欧米向け接地シンボルの表示について注意!

欧米向け装置に要求される接地シンボルの表示を誤ることによって、重大な危険を生じる場合がありますので、そのシンボルの使い方について充分理解しておく必要があります。

接地シンボルを理解するため、米国においてはNFPA79規格とUL508A規格および欧州においてはIEC/EN60204-1等に使用方法が規定されています。この接地の目的についてはご承知のように感電に対するリスクとノイズの影響による誤作動に対するリスクを防ぐために要求されている規定であり、正しく理解することが必要です。

 
最初に欧米の配電方式(TN)と国内(TT)の配電方式の違いを理解する必要があり、それぞれに対応する接地が求められています。国内の接地方式をそのまま何も考慮せずに機械装置を欧米へ輸出した場合、装置の焼損や感電事故を起こすリスクが非常に高くなりますので充分注意してください。

感電保護として国内では通常漏電遮断器(30㎜A 0.1s感度)の装備と接地アース(C接地≦100Ω/>300V、D接地≦10Ω/≦300V)をすることで対応していますが、欧米のTN方式に対しては装置接地保護ボンディング回路(保護ボンディング回路)を構成することで対応しています。

この装置接地保護ボンディング回路は中性点に接続される電源供給接地端子とそれに接続される保護接地導体および機械装置構造導電部から構成されています。

 
IEC/EN規格ではこの回路を他の回路と明確に区別するため、緑/黄色やシンボル等を使用しています。電源供給端子についてはPE表示(○枠内にPE文字表示:緑/黄色カラー付等)、保護接地導体についてはアースシンボル表示(○枠内にアースシンボル表示:緑色、黄色、カラー付等)および保護接地電線については緑/黄色で目立つように識別されています。

 
米国NFPA79/UL508A規格ではこの装置接地保護ボンディング回路は電源供給接地端子とそれに接続される保護接地導体で構成されています。IEC/EN規格との違いは機械装置構造導電部をこの回路に含めていないことであり、接地電線の代わりに構造導電部を使用することが出来ないということです。すなわち、この米国規格の意味は構造導電部を介して他のモータ等のフレームに接地電線で接続することが出来ないということですが、IEC/EN規格ではその構造導電部が推定される地絡電流を銅導体に換算して同等に通電できる場合には接地導体として使用できることになっています。米国向けの場合は構造導電部を接地導体として認めていないので注意が必要です。

なお、米国での接地シンボルは電源供給接地端子にPE表示を使用することが可能ですが、通常GND, G, GR等の表示が使用されています。また保護接地導体の接続部にはIEC/EN 60147-5019のアースシンボルを使用することも可能であり、シンボルにカラー識別等の指定はありませんが欧州と同様に緑色等による識別が推奨されます。また接地導体は通常緑色が使用されますが緑/黄色でも可能となっています。

 
ノイズによるリスクを低減するためには装置の機能を正常に保つEMCの対応が求められており、必要の際は機能接地が装置接地保護ボンディング回路とは別に追加されます。特にイミュニティの対応としてはIEC/EN60147-5018, 5020のシンボルが使用されており、事故地絡電流を通電させる装置接地保護ボンディング回路の接地とは区別する必要がありますので注意してください。

以上

 
追記:来る6月7日(東京地区)、6月21日(大阪地区)でNFPA79-2012版の解説セミナーを開催しますので、この機会に是非ご参加下さい。

またご希望により10月には「リスクアセスメントと低減」の解説セミナーを予定しますので、セミナー内容等についてご要望等がありましたらお知らせ下さい。参考とさせて頂きます。

 

2013.4.5

制御回路部の要求パーホーマンスレベルPLrに対応する設計方法について

欧米での産業用機械はEN ISO 12100-2010に従ってリスクアセスメントされ、危険源が同定され、そのリスク低減を3(スリー)ステップで実施して、その機械の安全が最低限保たれるように設計製造されることが求められています。なお、この場合の電気制御システムについて、特に安全機能に関連する機器を含む電気制御システム、たとえばインターロック保護ガード回路や非常停止回路、自動再起動の防止回路、両手操作回路あるいは安全速度に減速するような安全に関わる回路(安全関連部/制御システム;SRP/CS)等については別のEN ISO 13849-1(機械安全:制御システムの安全関連部)に従った設計をしてリスク低減に対応することが求められています。

このEN ISO 13849-1は安全機能に関連する機器を含む電気回路等の制御システム(SRP/CS)に於いてもリスク低減を実施して、リスクグラフの手順に従って決定される最低限要求のパーホーマンスレベル(要求PLr)を決定することが求められています。この機械の完成後に算出される安全関連部SRP/CSの最終パーホーマンスレベルPLが最初に決定した要求PLrと等しいか、あるいはそれ以上とするために、SRP/CSの構成部品の選定やその回路の冗長化等の方策によって対応することを求められています。

更に、この安全に関する最終的なSRP/CSのPLが実際に要求PLrに等しいか、それ以上であるかの妥当性を機械装置メーカは2013年4月1日より施行された最新のEN ISO 13849-2:2012(機会安全:制御システムの安全関連部、妥当性について)により確認する必要があり、またその実施記録を残す必要があります。これは新たに欧州33カ国向けに輸出する機械について求められますので注意してください。

この妥当性の記録作成はSRP/CSの設計者によるのではなく第三者(第三者認証機関を必要としているものではなく、たとえば品質管理部やコンサルタント等)によって妥当性評価すべきものと規定しています。すなわち、SRP/CSの設計担当者以外による妥当性評価(EN ISO 13849-2:2012による)が求められており、その実施記録をも要求しています。

以上

追伸 : 

来る6月7日(東京地区)、6月21日(大阪地区)にて「NFPA79-2012版の解説セミナー」を開催します。この機会に是非ともご参加下さい。


東日本大震災に学ぶリスクアセスメントの重要性について

福島第一原子力発電所の地震と津波による不幸な事故は日本や世界の人々に大きな衝撃と心配を掛けています。この責任は天災であって仕方がないことなのでしょうか、それとも他の誰かにあるのでしょうか。このような重大な事故による危険な状態はまったく想定できなかったのでしょうか。現在、リスクマネジメントを推進する学者やコンサルタントの中にはこの事故は当然想定すべきことであり、対処すべきものであったと結果論的ではありますが唱えている人々もおられます。このような事故が先進国といわれる日本で起こったことが、非常にお粗末であり、無防備であり、何かが欠けているような感じさえ致します。

 NFPA79に於いても産業用機械の設計に際しては危険状態になることを想定し、その危険状態による影響をできるだけ少なくすることが求められています。この規格に含まれるリスクアセスメントに従う機械安全の考え方には、人間が設計して組み立て、運転する機械装置は破棄するまでの全寿命の間、必ず最悪の危険状態になるということを想定し、その影響に対して如何に対処するかということが含まれています。この安全に関する原則を素直に受け入れる必要があります。

最近、東日本大震災でメディアに出てくる多くの科学者や設計者、運転者、管理者たちの発言はこの大地震と津波は想定外~想定外のオンパレードで終始しており、まったく予想できず仕方がない事故であったという悲しい理由で彼らの責任を逸らしているようにも感じます。

この悲しい理由に相反して、今や危険を想定するリスクアセスメントの実施は世界の常識であり、その評価によるリスクリダクションは機械装置を建造する設計者の義務・責任となっているからです。想定外と唱える科学者や技術者たちによる事故の原因とは異口同音に歴史的にもこのような大震災が起きたこともなく(反論する科学者もいますが)、それ故に今後も起こり得ないという判断に依るものであって、想定される範囲外であったので対処をしていなかったことに依るとのことである。

従って、原発の推奨者は過去に起こった最大の震災や津波によるデータを考慮した基準に安全率を加えた耐震設計や防波堤を設置しているので充分に安全であり、危険状態になることは決してないと自信を以って多くの人々に安全な原発を宣伝していたように記憶しています。

日本の頭脳を総結集して原発に関わった科学者や技術者たちの安全と判断するような技術力は今後も本当に世界で通用するのでしょうか。今や世界の目が日本に向けられており、安全意識は、安全管理はどうなっているのかと不安に感じているかもしれません。それ故に企業経営者はともかく少なくとも現場で働く日本の技術者、設計者たちは先頭に立って危険源を同定するToolすなわちリスクアセスメントに関する思いを変える必要があります。

 注意することは、私たちの設計した機械装置は過去の実績からも充分に安全が考慮され、製造されているものであって危険状態になることはないと断言する思いです。

原発は安全であると断言されたが故に、最悪の危険状態を想定することが矛盾するという理由からなのか、原発設計者は危険状態になったときの影響への対応を積極的に行わず軽視してきたように感じます。なぜなら、最近のニュースで関西電力は最悪の危険状態を想定することによって追加の非常用電源車を津波の影響のない高台に設置するという判断をしたことからも理解できます。いつでもリスクアセスメントしようと思えば最悪の危険状態を想定することができ、それによってしか最悪の危険に対処でき回避することができないということ知るべきです。

 リスクアセスメントは最悪の危険状態を想定することであり、その危険状態による影響をどのように低減させることができるかを判断するために大切な行為です。また、その行為は設計者にとって世界の常識であることを私たちは知る必要があります。

これら危険源の低減を求めるリスクマネジメントを欠くことは世界から安全に対する意識が軽視され競争に遅れをとることを意味し、さらに機械装置メーカにとっては敗者への道に至ることを意味しています。この日本の災難を次のステップへの原動力とし、リスクに対応した地域社会や機械装置を構築することで「がんばる日本」を世界にアピールできることを願っています。

 追記:
2012年10月19日(金)東京浜松町にてNFPA79の実践的な設計解説セミナーを開催します。米国ANSI B11.TR3-2000 「リスクアセスメントとリスク低減のガイド」の概要も含めて解説いたしますので、是非ともご参加下さい。詳細は弊社HP「お知らせ」を参照下さい。


欧州向け電気制御機器のATEX適合品の使用について

欧州向け機械装置の現地設置に関してトラブル発生の情報があります。このATEX指令は欧州連合の加盟国間にて適用されている防爆規格の追加の安全規格であり、この安全要求を満たしていない製品はATEXを適用すべき区域での使用ができませんので注意が必要です。

このATEX 100指令(94/9/EC)は通常のEEx等でマーキング(EN50014)されるCENELEC 防爆規格に加えて、この防爆規格を適用すべき区域と一般使用機器を使用できる区域との中間に位置する区域に関して2003年7月から適用することを義務付けています。すなわちその中間に位置する区域とは機械装置等に事故が発生することによって扱っている原料等の粉塵、粉末等が発散して爆発の危険を生じる区域であり、この粉塵爆発危険区域に設置される電源スイッチや操作スイッチ等はATEX適合品を使用することが求められています。

 規定された安全が求められる防塵爆発危険区域としては通常、製粉工場、金属粉が堆積するような場所、木工機械を扱う場所、セメントプラントあるいはアルミニューム製造工場等が適用されます。

(ATEX適合品のマークについて)

ATEX指令で適用される雰囲気は2つのクラスに区別されている。

Gクラス: 爆発性ガスに適用。

Dクラス: 可燃性のちり、粉末、粉塵等に適用。

さらに使用する電気機器のATEXに適用される雰囲気は2つのグループに区別されている。

グループ Ⅰ: 地下等で使用される鉱山に適用。

グループ Ⅱ: 地上の産業用途で使用される場所に適用。

 
労働者保護に対するATEX 137指令(1999/92/EC)はさらに雰囲気をゾーンで区別しています。

Zone 0、1、2 はガスに適用します。

Zone 20、21、22 は粉塵に適用します。

 
粉塵に適用されるZoneの区分とその雰囲気。

Zone 20(1D): 頻繁にあるいは常時可燃性の粉塵にさらされるところ。

Zone 21(2D): 通常の運転で時に可燃性の粉塵にさらされることがあり、試験認証機関によって認定された防塵保護モータのみが使用できるところ。

Zone 22(3D): 通常の運転では生じないが事故により可燃性の粉塵にさらされ、通常の防塵保護モータが使用できるところ。

 
例えば、Zone 22、カテゴリ 3で使用する電源スイッチ、操作スイッチ等は以下のようなATEX適合品のマークまたは試験機関の認定証書が必要となりますので注意してください。

マーク: Ex Ⅱ3D IP5X T90℃

試験認証機関: EXAM BBG Pruef-und Zertifizier GnbH

以上


機械安全の国際規格

WTO/TBT協定は北米、欧州その他加盟国に各国の強制規格、任意規格、適合評価手続などの制定にあたってはISO規格やIEC規格などの国際規格に整合化させることを義務付けています。従って、WTO加盟国でありWTO/TBT協定に批准している日本(メーカ)は産業機械についてもJIS規格を国際規格に整合化させる義務を負っています。

機械安全に関する ISO/IEC Guide 51 ガイドラインは規格作成に際し“安全”を導入することを義務付けており、日本から輸出する産業機械についても最低限 ISO12100 「機械類の安全性―設計のための基本概念、一般原則」と ISO14121「機械類の安全性―リスクアセスメントの原則」に対応する必要があります。

吹田のエキスポランドで起きた遊具事故での話題になったJISの検査規格の適用は任意規格であり、上述の機械安全規格も同様に国内ではメーカや設計者の善意に依存するところとなっています。

但し、輸出機械については ISO12100-1, -2 規格に整合された JISB9700-1, -2 と ISO14121 規格に整合された JISB9702 には IDT(一致)、MOD(修正)、NEQ(同等でない)の整合レベルが存在し完全に整合されていないため安全規格の適用には充分注意が必要となります。

リスクアセスメントの実施義務について

産業機械を国際規格の“安全”に対応するためにはISO/IEC Guide 51による機械安全のリスクISO14121規格によるリスクアセスメントが求められており、北米向けでもNFPA79規格の付則やANSI_B11_TR3等によるリスクアセスメントを実施することが求められているのが現状です。

リスクアセスメントによる安全へのアプローチ

リスクアセスメントは機械や制御盤の危険源を同定し、そのリスクを見積もり、そのリスクが受け入れ可能か否か評価することにあります。このリスクアセスメントによってリスクを低減させるために求められるリスク対策を加えたものがリスクマネージメントとなります。

リスクマネージメント=リスクアセスメント(ISO14121)+リスクの低減(ISO12100)
 リスク = 危害のひどさ x 危害の発生確率

機械装置等の危険源(ハザード)には感電のリスク、押しつぶしのリスク、転倒等のリスクがあり,安全のため予想される全ての条件でのリスクをリストアップすることが求められています。

安全とは「受容できないリスクのないこと」であり、リスクを受け入れ可能な取るに足りないリスクまで減らし、安全を実現することであり、機械メーカや設計者は実在する危険源を可能な限り合理的に低減する対応が義務付けられています。

なお、ISO/IEC Guide51では用語“安全“の使用が制限され、安全ヘルメットを保護ヘルメット等のように目的を示す表現に置き換えることが求められていますので、安全という用語の使用には注意が必要です。

危険源のチェックリストの一覧表がISO14121(JISB9702)の附属書Aにサンプルとして記載されていますので、リスクアセスメントに際して参考とすることができます。

更に会社(メーカ)は新たな ISO/IEC Guide73ガイドライン に従い、組織運営(活動と意思決定)に関するリスクマネジメントの実施が同様に求められています。

以上

 
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