3. 高SCCR値を求められる制御盤内に配置される中継端子台を選定するときに注意すること。(その2)

高いSCCR値が要求される制御盤の電源供給端子台あるいは電力分岐端子台PDB(Power Distribution Blocks)および最終分岐端子台TB(Branch circuit Terminal Blocks)を選定する場合にはSCCR値の決定に際して注意が必要です。端子台のSCCR値が未試験のもの、あるいは不明の場合はUL508A 表SB4.1規定により10kAとなりますが、それ以上のSCCR値が要求される場合には端子台の単体のSCCR値のみではなくその回路の遮断機能を有する過電流保護機器OCPD(ヒューズやブレーカ)との組合せSCCR値を考慮する必要があります。(米国ULサンノゼ・カリフォルニア州にて確認済)

米国はヒューズ社会であり多くの制御盤には過電流遮断保護機器としてヒューズが使用されていることはご承知のことと思います。米国ヒューズメーカはCBに比べ高遮断機能を有し、さらに限流特性が大きいため多くの機器を保護できるということで制御盤を高SCCR値とするためには有効な方法であると宣伝しています。

従がって、北米の多くの産業用端子台メーカは指定するヒューズclassと適用電線サイズとの組合せにてSCCR値を表示していますが、それら組合せに含まれていない端子台については先にも述べましたがUL508A によりSCCR値が10kAとなるので注意が必要です。

 

他方、国内では過電流保護機器としてヒューズではなくサーキット・ブレーカで回路の過電流を保護していることが大勢を占めていますが、UL508Aの認証を受ける場合にはブレーカと端子台との組合せSCCR値の確認が要求されることがあります。ただし、端子台とブレーカの組合せSCCR値を表示している国内の端子台やブレーカメーカーは少ないのが現状です。

端子台メーカーの多くはヒューズとの組合せSCCR値を表示することが多いのですが、サーキット・ブレーカとの組合せSCCR値を表示している国内の端子台メーカーとして、私の知るところではOSADAがあります。その端子台と組合せをしたSCCR値を表示しているサーキット・ブレーカーの国内メーカーには富士電機(SA/EA/BWタイプ)と三菱電機(NF/NVタイプ)の2社がUL認定されていますので以下を参照ください。

(参考例CCN; XCFR2, name; OSADAにて検索が可能)

http://database.ul.com/cgi-bin/XYV/template/LISEXT/1FRAME/index.html

 

端子台の選定例として、3相480Vのフィーダー回路に配置される電力分岐端子台PDBを分岐回路で使用の分岐端子台TB (OTP2000-SCCRタイプ;200A SCCR値65KA UL1059)で転用する場合、(その1)で述べた極間の沿面距離やスペース等を考慮し、更に上流に配置するサーキット・ブレーカをNF250-HVUタイプ (3P200A SCCR値50kA) としたとき、電力分岐端子台PDB(SCCR値65kA)との組合せSCCR値としては50kAではなくメーカー表示(ULより検索可)により25kAとなります。

なお、端子台(その1)でも述べましたが、この端子台OTP-2000-SCCRはフィーダー回路に配置されるため、UL508A規定では相(極)間の沿面距離を50.8mm要求していますので、一体型の3Pタイプは使用できず、1Pタイプの分岐端子台を間隔を空けて3個配置することで要求される相(極)間の沿面距離を確保して対応することになりますのでご注意ください。以上

 

所感;

制御盤のSCCR値を高くする方法として、最近では分岐回路について過電流保護機器(サーキット・ブレーカー、ヒューズ、Type E自己保護形マニュアルモータスターター)とコントローラー(電磁接触器+サーマルリレー等)の組合せを一体化することでコンパクト化を達成し、高SCCR値になるという宣伝文句でType Fのセルフ保護コンビネーションモータコントローラーの使用が多くなっているようです。

(組合せSCCR値は以下ULにて検索可能)

http://industries.ul.com/blog/short-circuit-current-ratings-of-industrial-control-panels-incorporating-combination-motor-controller-components

 

ただし、外部接続電線ケーブルをType Fのコントローラーに直接に接続する場合は問題ないのですが、外部接続端子台TBを介してコントローラーに接続する場合は先に述べた端子台と過電流保護機器との組合せSCCR値が最終的に影響しますのでUL508A認証を受ける場合には注意が必要となります。

過電流保護機器と端子台の組合せを国内製のサーキット・ブレーカ等で対応しようとする場合には組合せSCCR値の表示で大変苦慮することになり、結果的にはヒューズを使えということになるのでしょうか!!

北米のヒューズ社会に飛び込むのですから多くの困難があるのは当然なのかもしれません。この端子台と過電流保護機器の組合せSCCR値の要求について国内では余り聞きませんが、これらは国内事情によるのか、または単に私にその情報が入っていないだけなのでしょうか。何れにせよ装置を北米に輸出する場合はこの点を考慮しておくことは問題を避けるために必要と思います。(その2)終わり

 

参考;

Short-circuit Current Rating (SCCR) UL 1059 XCFR2

Terminal blocks are considered suitable for use on a circuit capable of delivering

not more than the stated SCCR at the maximum voltage specified when protected 

by the max ampere and Class of overcurrent protective device noted in the individual Recognitions.

SCCR値

端子台は個々の使用条件に従い、その最大定格電流と過電流保護機器のクラス(遮断ヒュースtype等)によって保護されるときに、指定された最大電圧での表示SCCR値以下で使用される回路に適合するように考慮される。

以上