北米向けで特にUL508A認証を受ける制御盤等で端子台を選定する場合に注意すること。(その1)

特に主回路で使用される端子台については、多くのエンジニアが選定するUL1059のRecognized品での対応が可能なのですが、使用場所によってはAHJ (現地検査官) によって拒否される場合がありますので充分注意して下さい。

主回路にはフィーダー回路 (feeder circuit)に配置される電源供給端子台および電力分岐端子台(PDB; Power distribution blocks)があり、また最終分岐回路(Branch circuit) に配置される分岐端子台(TB; Branch circuit terminal blockモーター負荷回路等の外部接続端子台)があります。これらの選定に際しUL508Aの認証を受けるためには以降に述べる点に注意する必要があります。

要求事項;

  1. 電力分岐端子台PDBや分岐端子台TBを選定する場合に注意すること。(その1)
  2. 高SCCR値を求められた制御盤内に配置の端子台を選定するときに注意すること。(その2)

 

 制御盤の主回路に使用される中継端子台には電源供給端子台、電力分岐端子台および分岐端子台等があります。これらの端子台はNRTL(第三者検査機関)によってリスティングあるいはラべリングされている認定品であることがAHJにより求められていますので、そのevidence証明としてListed品(使用条件無し)あるいはRecognized品(使用条件付)であることが端子台の選定のために必要な情報となります。

Recognized品の選定に際してはUL Japanのホームページ

http://database.ul.com/cgi-bin/XYV/template/LISEXT/1FRAME/index.html

から端子台UL1059の(CCN; XCFR2で)国内販売メーカーの全リストを検索することができます。

 

電力分岐端子台PDBについてはUL1953規格のListed品であるため、そのまま無条件で主回路に配置して使用することができますが、この国内メーカー品は供給されていないため輸入品となります。また、電源供給端子台や分岐端子台についてはUL1059規格のRecognized品であって、国内メーカー品も多数供給していますが、そのまま無条件では主回路に使用できないため注意が必要です。この際、なぜUL1059規格品の端子台はそのまま主回路に使用できないのかを理解することをお薦めします。

 

予備知識として端子台のUL1059規格書の表8.1には沿面距離と空間距離の最小要求スペースが記載されており、そのスペースは適用する場所によって異なる使用グループ(Use Group)が AからEまでの5つのグループに分類されています。その各使用グループと使用電圧によってさらに要求される最小スペースが異なるため、単にUL1059規格を取得しているだけではその端子台を主回路に自由にそのまま使用することができなく、その端子台の端子間の沿面距離や空間距離によっては設置場所が制限されることになります。

 

以降、参考例で解説を致します。

最初に述べたように電力分岐端子台UL1953規格のListed品は主回路のどのような場所にでも自由に配置することができます。ただし、UL1953規格の国内メーカ品が供給されていないため電力分岐端子台は使用できないのかと疑問が残りますが、私の知る限りにおいては国内メーカ品で唯一使用できる分岐端子台がOSADA端子から供給されています。しかしながら、その分岐端子台はRecognized品(UL1059規格品)のため自由に配置して使用することができないためUL508Aで要求されている条件を満たすことによって選定が可能となります。

 

そのUL508A 規格の制御盤に要求されている条件を満たすためには、例えばフィーダー回路に電力分岐端子台を使用する場合UL1953規格品は入手困難なため、UL508A 28.2.4(b)項による条件28.2.1項に記載の表10.2で要求される沿面距離と空間距離のスペースに従うことによってUL1059の分岐端子台をフィーダー回路の電源供給端子台や電力分岐端子台に使用することができると規定されています。

 

すなわち、UL1059規格の分岐端子台をフィーダー回路で使用するためには表10.2のフィーダー回路で要求されているスペースを確保することが求められます。

 

例えば、AC480Vフィーダー回路の電力分岐端子台の端子間の沿面距離については50.8mm以上、空間距離では25.4mm以上および対地間距離は25.4mm以上と規定されています。

また、AC208V回路ではそれぞれ31.8mm以上、19.1mm以上および12.7mm以上の距離が要求されており、それらを満足する必要があります。ちなみにこのUL508A 表10.2で要求されているスペースはUL1059規格で要求されている表8.1の使用グループA(Use Group A)のスペースに相当しています。

 

 

さらに、AC480V最終分岐回路の分岐端子台の端子間の沿面距離については12.7mm以上、空間距離では9.5mm以上、対地間は12.7mm以上。AC208V回路では沿面距離9.5mm、空間距離6.4mm以上、対地間は12.7mm以上が要求されています。

従がって、分岐端子台がUL1059規格に適合していたとしても、それぞれの配置場所と使用電圧によって異なりますので要求スペースに合致した端子台の選定と配置が必要となります。

 

通常、国内ではUL1059規格に対応した分岐端子台をフィーダー回路の電源供給端子台や電力分岐端子台として使用することがありますが、相間の沿面距離を確保できない(多くの国内メーカのUL1059規格の端子台はフィーダー回路の条件を満たしていない)場合が多々あります。そのときは分岐端子台1極の端子台を3台、横並びで間隔を空けて1極を独立させた配置をすることによって相間の沿面距離を確保することが可能となります。

 

感想;

経験のあるUL検査官の検査ポイントとしては端子台については電線を接続した場合に圧着端子の露出充電部と対地間の空間距離や端子台保護カバーの固定の有無の検査が主となっているようです。フィーダー回路の電源供給端子台や電力分岐端子台に多くはUL1059の端子台を使用しており相間の沿面距離50.8mm(25mm x2;480V)の確保も当然必要なことと考えますが、国内事情によるのか私の情報不足なのかそれら距離が徹底されてないように思われてなりません。注意して下さい(その1)終わり。

以上