米国向けモーター回路で高SCCR値を達成するためにヒューズ選定をするときに考慮すること

北米向け制御盤には規定によりSCCR値の表示が求められていますが、最近その値が高いSCCR値を機械装置メーカーに要求される傾向があります。 特に商社や機械装置メーカーの販売部門は高SCCR値の方が高性能であるとの認識があるようで、安易に製造部門に対して高SCCR値を求めているようにも感じています。

 

高SCCR値とする場合、特に機械装置がNRTL(米国認証試験機関)の認証を受ける場合は注意が必要です。

 モーター分岐回路は主にListedされている各機器 [Disconnector (断路器・負荷開閉器等)・OCPD過電流保護機器(ブレーカ・ヒューズ等)・コントローラ(コンタクタ・INVドライブ・サーボドライブ等)・過負荷保護機器・端子台] および電線ケーブルにて構成されています。 高SCCR値の分岐回路とするためには前述の各機器が要求される高SCCR値に対応しているものを選定する必要がありますが、各機器メーカーは過電流保護機器とコントローラを組合せした高SCCR値の製品を揃えています。ただし、これら高SCCR値の組合せ機器を使用できない場合、その対応としてはヒューズを使用することが考慮されますが、特にSCCR値が25kAを超えるような要求のある場合には多々機器の選定に問題が生じるようです。

 

 ヒューズを選定する場合に注意することは、そのヒューズの特性によって分岐回路の各機器を保護できるかどうかということです。まず、米国のヒューズ特性と各機器固有のSCCR値について知ること、及びどのように機器を保護するかを理解する必要があります。

 各機器固有、あるいは組合せのSCCR値の情報についてはメーカーのカタログから得ることができますが、SCCR値が不明の場合はUL508A 表 SB4.1から得ることができます。 米国ヒューズ特性については国内で入手が容易であるCooper Bussmannのカタログから情報を入手できますが、どのように機器を保護できるかについてはそのカタログに記載されている「電流-時間特性曲線」と「限流特性曲線」を使用することになります。特にSCCR値の対応に関しては「限流特性曲線」を活用することになります。

 

例、 モーター回路460V、モーター定格10HP、各機器のSCCR値はコンタクタ5KA、サーマルリレー5kA、および機械装置に要求されるSCCR値は35kA/460Vとする。

 

OCPD(ヒューズ)にて高SCCR値への対応をする場合;

通常モーター回路の25A以上では600V対応のヒューズ Class Jタイプ等が選定されます。モーター定格は10HPですので、NFPA79/UL508Aの規定(定格電流の175%以下)によりヒューズ定格は最大25A 、遮断容量200kAの選定が可能となります。ただし、この分岐回路の推定短絡電流あるいは地絡電流値は要求により35kAと指定されていますので、選定したClass Jのヒューズ定格25Aの「限流特性曲線」により、その35kAに於けるヒューズの最大通過電流値は約3.2kAまで限流されるため、コンタクタやサーマルリレーの固有SCCR値5kAより小さいことから、ヒューズ定格25A  はそれらの各機器を保護できると判断することができます。 なお、ヒューズの限流特性の最大通過電流値についてはUL508A 表SB4.2にも記載されていますが、その表には遮断容量の定格値として50kA, 100kA, 200kAの三種類のみの選定となっており、要求されている推定短絡・地絡電流値35kAに対応する限流値は記載されていないため適切な対応ができないことになります。

 

その表を使用する場合にはヒューズ定格電流25Aで遮断容量50kAあるいは100kAのヒューズを選定することになり、それぞれ余裕のある限流値(通過電流値)として6kAになることが読み取れます。この表からヒューズ定格25A (50kA または100kA)の通過電流値6kAは分岐回路の各機器固有のSCCR値5kAには大きすぎるため保護できないということになり、先の選定判断とは異なった判断になります。

従って、詳細な判断を求める場合には選定したヒューズメーカが表示している「限流特性曲線」を使用することをお薦めいたします。

 また、ヒューズと電線ケーブルの保護協調も確認する必要がありますが、これについては後日掲載いたします。

以上