欧米向け制御盤での電源供給電線・ケーブルの主電源開閉器等への直接接続について

産業用機械装置の制御盤の規格NFPA79、IEC/EN60204-1では電源供給電線・ケーブルを主電源ブレーカ等に実施可能(practicable)であるならば直接接続することを求めています。最近、この要求が海外向け物件の各設計者に伝わってきているためなのか、電源端子台を省く設計が多くなっています。この結果として、工場出荷前の機械装置の製造工場内での試運転時には電源供給ケーブルを制御盤に接続する際に、高い位置に取付けられた主電源ブレーカ等への不安定な姿勢での配線作業や、更に狭い配線スペースでの接続作業に四苦八苦している姿を時々見かけることがあります。当然、この直接接続の作業は現地の据付時やメンテナンス時にも同じことが予想されることになります。

 

制御盤設計者には制御盤のコンパクト化や省コスト化を含めて、是非ともこの直接接続の設計をする際に考慮して頂きたいことがあります。何故、「電源供給電線・ケーブルは主電源ブレーカの電源側に接続しなければいけないのか?何故、電源供給電線・ケーブルは主電源ブレーカの下部の負荷側に接続することができないのだろうか」と。

 

直接接続を採用する際の提言。

もし、主電源ブレーカの下部の負荷側端子から電源供給することができるならば、上述の接続作業も容易になるし、電線の引き回しも省くことができ、その分のスペースを有効利用することも可能となります。

 

私の設計経験から欧米では制御盤に引き込む電源供給電線・ケーブルは特別な要求が無い限り、制御盤の下部からの入線が多いため、主電源ブレーカへの接続は中継端子台を設けずに直接接続することが多かったように記憶しています。このような設計は端子台での接触不良等を低減するためにも有効であり、リスク低減の観点からも求められていることです。

 

NFPA79、IEC 60204-1の規格はそれぞれNEFA70(NEC)、IEC 60439規格の電気設備規格の思想が受け継がれています。すなわち、配電盤等のブスバー母線は安全の観点から上部に配置され、電源供給ケーブルは原則下部から引き込まれて主電源ブレーカ等を介し、上部のブスバーに接続されることが通例となっています。 

同様に制御盤に於いても電源供給電線・ケーブルは盤の下部から引き込まれ、主電源ブレーカの下部端子に接続され、そのブレーカの上部端子から盤の上部に配置のブスバーや各分岐ブレーカに接続されています。

 

他方、国内での設計は昔から先輩たちからも指導されてきたように主電源ブレーカの上部の電源側端子に電源供給電線・ケーブルを接続することが常であり、ほとんどの設計者は主電源ブレーカの負荷側に電源供給ケーブルを接続することはありませんでした。これにはご承知のように一つの大きな理由がありました。

 

 すなわち、国内品のブレーカについて、以前には負荷側から電源供給(逆接続)できなかったことに依ります(欧米品は逆接続が可能であったので直接接続が推奨されていた)。然しながら、国内品でも少し前からブレーカの逆接続が可能なタイプが多く販売されるようになっており、是非とも海外向けについては国際規格に応じた設計のチャンスがありますので、先輩より引き継いでいる「主ブレーカの電源供給は上部の電源側端子への接続」に拘らず、下部からの電源供給を検討して頂きたいと思います。それによって、先に述べた電線の引き回しを省くことや、スペースの有効利用、リスク低減等の多くのメリットがあることをご確認ください。

 

ただし、国内の作業者はブレーカの負荷側からの電源供給入力には慣れていない為、試運転時には作業者の勘違いをするなどの点を考慮して、警告表示および周知徹底等は客先据付時と同様に充分に注意して安全を促す必要があります。

 

従がって、結論として直接接続がPracticableであるならば電源供給端子台を設けずに直接に電源供給電線・ケーブルを主電源ブレーカの下部の負荷側端子に直接接続することを含め、上述のリスク回避や、省スペース、省コストを実現するように設計されることを推奨させて頂きます。

以上