AC・DC制御回路の接地要求について(再確認)

全ての機械装置はIEC60204-1あるいはNFPA79の9.4.項(Control function in the event of failure)共に制御機能についてリスクアセスメントを実施してリスク低減するように規定されています。

 

これらIECおよびNFPA79の9.4.1項には制御機能におけるリスク低減の方法が規定されており、リスク低減の最初のステップとしての本質的設計段階の対応が求められ、そこには実証された回路及び機器の使用の要求が規定されています。

従がって、この実証された回路と機器の使用はISO13849-1及びANSI B11.0の安全カテゴリとしてそれぞれカテゴリ「1」あるいはリスクレベル「低」に相当しており、さらに高い安全性を要求される機械装置については少なくともこの実証された回路や機器を使用しつつも、更に高度な多様性や多重性の回路設計が求められています。

 

IECおよびNFPA 9.4.2項には制御回路の地絡等による「意図しない起動」や「暴走:停止不能」リスクに対する保護の要求が規定されていますNFPA79では、このリスクを避けるため制御回路の1線を8.2項に従い装置接地回路に接続し接地することが規定されています。なお、8.3.2項にて、この接地回路側配線は制御盤の外部に配線が出ないことを条件にサーマルリレーのNCトリップ接点の挿入のみが認められており、その他の何れの接点も挿入できないと規定されています。

 

制御回路については以上のようにリスク低減を求めた実証された回路を使用することが合理的な対応となっています。然しながら、制御回路を接地したくない場合にはNFPA 8.3.2項に従って絶縁監視モニターを使用して地絡を検出し、それを警報表示するかあるいは回路を遮断することが求められており、結果的には費用が掛かることになります。

 

IECおよびNFPA79規格では制御回路の接地および非接地の何れの対応も可能となっていますが、現段階では非接地回路は費用も含めて多々問題が生じることになります。例えば、絶縁監視モニターは国内メーカー品としては販売されておらず(必要の場合はイートン・ジャパン社が扱っている)入手が困難となっています。

 

その他の非接地回路の対応としては制御回路をClass 2回路で対応することがありますが、Class 2回路を採用するには多々条件があり、最も使用の妨げとなっている使用条件としては制御回路の電源容量を100VAに制限されていることです。当然電源の並列使用が禁止されていることは言うまでもありません。

然しながら、この制御回路の容量以内で対応できるのであれば接地しない回路の一つの対処法となるかも知れません。

 

上述した方法以外に接地を必要としない回路で前述の「意図しない起動」や「暴走:停止不能」のリスク低減に代わって機能安全を達成できる方法があるならば、それは規定により制限されていないと言うことですので次世代の安全設計を試みることは価値のあることと考えます。

以上