供給電源の停電や電圧降下等の電源異常による機械停止と、その際に生じる復旧・復電による意図しない機械の突然な動きのために、全ての産業用機械はその危険な再起動を防止する対応が現地AHJによって求められています。
この要求は以下の規格に依ります。
NFPA79 7.5項では、全ての機械装置は供給電源の停電や電圧降下によって作動する不足電圧保護機器(Under voltage protection)等を設けて機械を遮断・停止し、電源復電時の意図しない再起動を防止して機械や作業工程に危険あるいは損害等を生じないような保護が求められています。
以上の関連規格として;
9.2.1項 起動機能は関連する回路の電圧印加操作によって運転することが求められます。
9.2.2項 停止機能は関連回路の遮断に依りその関連機能を停止させ、リセット操作で起動せず、危険状態を生じないこと。
5.3.3.2.1項 電源開閉器あるいはブレーカの替りにプラグコネクタを電源開閉器として使用する場合は開閉器やコンタクタによる電源を開閉する機器を設けること。
以上により、供給電源の停電や電圧降下による機械の停止と、意図しないその復旧・復電による危険な機械の動きを防ぐために、産業用機械は電気回路の主電源ブレーカに組込まれる不足電圧トリップ(Under voltage trip ;UVT)あるいは不足電圧リリース(Under voltage release ;UVR)の装備が求められています。それらを設置しない機械装置については供給電源の停電や電圧降下による機械の停止と、その電源復旧による意図しない再起動への対応として、電圧監視リレー等の追加が求められることになります。
主電源回路に主ブレーカと主コンタクタを配置して電源回路を開閉している機械装置については主ブレーカにUnder voltage protectionを装備しなくても供給電源の復旧に際して意図しない再起動は主コンタクタによって防止されます。ただし、主電源回路に主ブレーカのみで主コンタクタを配置せずに直接モーターに電源供給している負荷、あるいはインバータあるいはサーボドライブに直接電源供給している機械装置の場合には、供給電源の復旧に際して意図しない再起動による危険な状態や装置の損傷等を防ぐことができない場合があります。例えば、ボール盤やミキサー等の小形機械装置は特に注意する必要があります。
これらの問題を合理的に解決するためにブレーカメーカーによりUVTあるいはUVRが供給されており、主電源ブレーカに組み込むことによって簡単に対応することができます。なお、瞬停等の短時間の電圧降下についても遮断しないように短時間設定できるUnder voltage trip/releaseが販売されていますので、供給電源の不安定な地域での使用が効果的となっています。
なお、UVTやUVRを組込んだ主ブレーカをOFF状態にし、機械装置を使用しない時でもUnder voltage protectionにはそのUVT/UVRに常時電圧が印加されていますので、その寿命に影響が生じることになります。欧米ではそのような寿命への影響を避けるための対応が求められていることから、そのUVT/UVRを装備した機械の不使用時の常時印加を防ぐために主ブレーカを投入する際にのみ、その不足電圧回路に電圧を印加できる特殊なNO接点機能(以下の参考を参照)を持ったUnder voltage trip やUnder voltage release ユニットが供給されている程です。ただし、この接点機能を有するUVT/UVRの国内のブレーカメーカー品はまだ供給されていません。欧米に輸出する特に小型の機械装置にはその接点機能を有するUnder voltage protectionを装備することをお薦めします。その他の対応策としては電圧監視リレー等を使用するために高価なものとなり、またスペースも必要になることは承知の通りです。
以上の現状からも不足電圧保護機器に対する国内エンジニアの認識まだ少ないようですが、欧米では必須装備品となっています。接点付UVT/UVRを供給していないことは国内のブレーカメーカーに責任があるのでしょうか、それとも・・・・。
以上
参考:
Eaton製 不足電圧リリースユニット ブレーカに装備可
タイプNZM1-XUVHIVL 特殊NO接点付